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本研究では、遷移金属錯体を触媒とするエステル類のアシル炭素-水素結合の切断反応の開発を目的とする。既に、われわれのグループでは、ルテニウムを触媒とする、エステル類の還元的脱カルボニル化反応を見いだしている。具体的には、ピリジルメチル基をアルコール部に持つエステルをギ酸アンモニアとルテニウムカルボニル触媒存在下、反応させると脱カルボニル化が進行し、アルカン類が生成する。本年度は、脱カルボニル化が進行しない触媒系の開発を行ったところ、求核剤として有機ホウ素試薬を用いると脱カルボニル化は全くおこらず、対応するケトンが生成した。エステルが脂肪族エステルの場合、フェニルホウ素試薬と反応し、高収率で対応するアルキルフェニルケトンが生成する。しかし、芳香族エステルの場合、副反応が起こるため、収率は中程度であった。さらに、官能基許容性も高いことがわかった。有機ホウ素試薬としては、フェニルホウ素だけでなく、アルキルホウ素試薬も用いることができることがわかった。この場合、非対称アルキルケトンの合成が可能である。現在のところ、収率に問題があるため反応条件の検討を行っているところである。
さらに、炭素-水素結合の直接カルボニル化反応の検討も引き続き行った。いままでのオルトカルボニル化に適用できた基質は、ベンゼン環と配向基の炭素-窒素結合が共役しているもののみであった。しかし、ピラゾールも配向基として働くことがわかった。このことからかならずしも共役系が必要でないことがわかった。
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