研究概要 |
(2,4,6-triisopropylphenyl)sulfiny1 基を持つnaphthaldehydeに対するグリニヤー反応及び向山アルドール反応は非常に高い立体選択性で対応する生成物を与えた。向山アルドール反応ではルイス酸により生成物の立体化学が完全に逆転することがわかった。2-acylnaphthaleneのDibalによる還元とLiAlH_4による還元反応では全く異なった絶対配置のアルコール体を与える。これらの反応はスルフィニル基上の置換基がトリル基やメシチル基では立体選択性が低く、トリイソプロピルフェニル基が最も良好な結果を与えた。一方、嵩高い第三級ブチル基の場合に得られる立体異性体の比は、反応基質のC-S軸不斉に由来する立体異性体比と一致した。これらの実験結果とX線構造解析、^1Hおよび^<13>C-NMRスペクトル解析により得られた知見を総合し、上記sulfinylnaphthaldehydeの反応における高立体選択性は、C-S結合の回りの回転異性体に起因することを明らかにした。C-S軸の回転異性体を利用した不斉合成の例は本研究が初めてであり、新しい不斉合成反応としての道を開いた。 一方、(2,4,6-triisopropylphenyl)sulfinyl benzaldehydeのグリニヤー反応および、対応するアシル体のDibal還元反応は完全に立体選択的に進行する。これらの反応でアルキルリチウムやLiAlH_4は低い立体選択性しか示さない。これらの結果は、ナフタレンの場合と異なり、ベンゼン環についたsulfinyl基の場合にはC-S結合が自由に回転し、キレーション構造の中間体を経る反応の時のみ高立体選択性を示す。生成物からスルフィニル基を除去することにより、光学的に純粋なジ置換メタノール誘導体を簡便に得ることができる。この反応は、鎖状化合物にも適用でき、高立体選択的に14-遠隔不斉誘導が可能であることを明らかにした。
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