研究概要 |
平成13年度、平成14年度は1-スルフィニルナフタレンの2位のカルボアルデヒド基あるいはイミノ基への求核攻撃が立体選択的に起こることを明らかにしてきた。すなわち、スルフィニル基の置換基にかさ高い2,4,6-トリイソプロピルフェニル基を有する場合、炭素-硫黄結合軸不斉が生じ、スルフィニル基の影響により高立体選択性で反応が進行する。グリニヤー反応、アルキルリチウムによるアルキル化、LiAlH_4,Dibalによる還元反応、向山アルドール反応などきわめて高い立体選択性を実現できた。 平成15年度ナフタレンの1位と2位、1位と8位にスルフィニル基、を有する不斉配位子の合成を検討したが、その合成に手間取り、不斉配位子としての適用の検討はなお、今後の解決すべき問題として残った。スルフィニル基を使ったβ-ケトスルホキシドの還元反応ではDibalによって一方のみの還元体を与えることを見出した。この反応は動的速度論的分割により起こり、スルフィニル基とβ位のシリル基によって立体選択性が制御されていることがわかった。また、フェロセン骨格を用いる軸不斉を利用した不斉配位子について検討した。上と下のフェロセン骨格の1,1'-位にスルフィニル基、ジフェニルホスフィニル基を導入した新しいキラルリガンドを合成し、Pdを用いたアリルアセタートとマロン酸エステルとの反応を行った。スルフィニル基上の置換基を検討したところ、かさ高い2,4,6-トリイソプロピルフェニル基の場合、収率立体選択性共に低く、1-ナフチル基の場合が収率、立体選択性共最も高かった。塩基、付加物、溶媒などを検討したが、炭酸セシウムを塩基として用い、ジクロロエタン中で反応を行ったとき高収率で生成物が得られた。
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