研究概要 |
ポリアセチレン、ポリフェニレインなどの長鎖π共役分子は有機機能材料として注目されている。また一次元性ポリ金属ワイヤーも無機系の機能材料、触媒として興味深い。本研究の目的は次のように要約される。1)これら二つの共役システムを配位結合を利用して接合させ、直線状の長鎖有機金属複合体を合理的に構築する方法を確立すること、2)合成した一次元複合体の触媒機能や電気特性を解明し、新規機能性有機金属複合材料を開発することである。まず配位力の弱い不飽和炭化水素で置換されやすい配位子である6分子のアセトニトリルがPd-Pd結合に配位した錯体の合成に成功した。この2核パラジウム錯体は、1,6-ジフェニルトリエンと容易に反応し、2分子のトリエンがPd-Pd鎖にサンドウィッチ配位する新規錯体を与えることを見出した。この構造の確認はX線構造解析で行った。さらにポリエンの存在下2核アセトニトリル錯体にゼロ価Pd錯体を加えると,当初目的とした長鎖パラジウムサンドウィッチ錯体を合成できることが判明した.つぎに2分子のジフェニルテトラエンがPd-Pd-Pd鎖をはさみこむサンドイッチ錯体のメソ異性体とラセミ異性体間の光駆動相互変換が起こることを見いだした。2つの異性体間の相互変換は、単なる加熱ではまったく起こらないが、510nm以上の可視光を溶液中で照射すると室温下、短時間で進行して光定常混合物となる。光照射に代わって電解を含む酸化還元プロセスでサンドイッチ錯体に摂動を与える試みは成功しなかった。
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