研究概要 |
1.水素化ナトリウムは最も小さい塩基であり,有機溶媒にはほとんど溶けない。しかし,酸性度の高い活性水素を有する基質の脱プロトン化には頻繁に使用されている。一方,単純ケトンと水素化ナトリウムをテトラヒドロフラン中に分散させ室温で放置させても水素ガスの発生はほとんど起こらない。しかし,この混合物にα-水素を持たないアルデヒド(2当量)を滴下すると,それに連動して水素ガスの発生が観測され,1,3-ジオール骨格を含む3連続立体中心を有する単一ジアステレオマーが得られた。この生成物に導入された水酸基の一つは,基質ケトンのカルボニル基に由来するものであり,連続アルドール・ティシュチェンコ反応が進行した結果であると説明出来る。ケトンのエノラートが介在している証拠は得られていないので,本反応は,水素化ナトリウム,ケトン,及びアルデヒドの3成分を含む特異な遷移状態を経ている可能性が高く,その問題に関するディスカッションを含めた論文を作成中である。 2.水素化ナトリウムが置換シクロヘキセノンと芳香族アルデヒドとのクライゼン・シュミット反応の塩基として有効で,反応の結果ジアリールメタンを与えることを見いだした。これについても論文を作成中である。 3.1,2の結果から,伝統的な塩基の潜在的可能性を引き出すことは重要であると考え研究を進めた結果,t-BuOKが単純ケトンとα,β-不飽和エステルとの連続マイケル・クライゼン反応によるシクロヘキサン-1,3-ジオン骨格合成の効果的な塩基であることを見いだした。シクロヘキサン-1,3-ジオンの一般的な合成法が始めて確立された。この結果については既に論文として発表した。
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