研究概要 |
光学活性含窒素有機化合物,中でもα位炭素がキラルなα位置換ピペリジンやピロリジンは医薬品に数多く用いられており,その高選択的合成法の開拓は極めて重要である。一方,本研究代表者らは,既にα-アミノ酸の電極酸化を利用したアシルイミニウムイオンの創成法とそのキラルバージョンを開拓している。しかし,キラルα-アミノ酸からキラルアシルイミニウムイオンへの変換(不斉記憶)において選択性の問題が残っていた。そこで,このイミニウムイオン創成の効率性に及ぼす各種影響因子の解明を行った。成果は以下のようにまとめられる。(1)不斉記憶に及ぼす構造効果:N-保護基がο-フェニルベンゾイル基,母核が立体的にバルキーであれば最高83〜91%ee,ピロリジン核のように母核がバルキーでなくN-保護基がバルキーなときには46%ee程度,母核がバルキーであってもN-保護基がバルキーで無いときには0%eeになることを見いだした。また,L-プロリン誘導体のカルボキシル基を還元して得られるβ-ヒドロキシアミンを電極酸化すると炭素間結合開裂反応が起こったが,その生成物のN, O-アセタールでも高い不斉記憶現象が観測された。さらに,ジフェニルメチル基をα位に有するN-アシルビロリジンの電極酸化でも中程度の不斉記憶が観られた。(2)不斉ルイス酸触媒と活性メチレン化合物との組み合わせによるイミニウムイオンへの触媒的不斉炭素間結合形成反応:光学活性ビスオキサゾリンと銅(II)からなる不斉触媒はマロン酸ジメチルと動的錯体動的錯体を形成させ,これとプロキラルなN-アシルピペリジニウムイオンを反応させるとピペリジン環α位でエナンチオ選択的に炭素間結合形成できることがわかった。
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