高分子間静電相互作用の共有結合変換に基づく多環高分子トポロジーの精密設計

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13450377
• 研究機関: 東京工業大学
• 研究代表者: 手塚 育志 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (80155457)
• キーワード: 高分子トポロジー / 環状高分子 / テレケリックポリマー / 自己組織化 / ナノテクノロジー

研究概要

本研究は、大環状構造を基本単位とする新奇トポロジカル高分子群を、申請者らが独自に開発した末端に環状オニウム塩基を有する高分子前駆体(テレケリクス)の高分子間静電相互作用による自己組織化とその共有結合変換に基づく効率的合成システム(Electrostatic Self-Assembly and Covalent Fixation)よって設計・合成するものである。本年度は以下の項目について研究を行った。
1.メタセシス縮合を用いる単環および双環高分子トポロジーの構築、 本研究では、これまでに種々の官能基を持つ環状高分子前駆体(kyklo-Telechelics)の効率的合成に成功している。この結果をさらに進めて、アリル基を持つ3種の環状高分子前駆体からの8の字型高分子の合成を行った。この際、Grubbs触媒を用いるメタセシス縮合を適用すれば、低濃度条件でも極めて選択的に分子内縮合が進行することが示された。これにより」単環状高分子だけでなく8の字型双環状トポロジー高分子の高効率合成に成功した。さらに高度な多環高分子トポロジーの構築を目的として、対照型カップリングプロセスであるメタセシス縮合反応に加えて、非対称型カップリングプロセスとしてSonogashira反応に着目し、水酸基型環状高分子前駆体を臭化アリール基およびアセチレニル基型前駆体に変換するプロセスについても検討した。
2.3種の双環状トポロジー高分子の設計と構築
双環状トポロジーには、8の字型の他にθ型と手錠型トポロジーが存在する。このうち後の二つを直鎖状テレケリクスと3官能カップリング試薬との組み合わせによって同時に生成するトポロジー異性体として、また、θ型高分子を3官能星型テレケリクスと3官能カップリング試薬との組み合わせによって選択的に合成することに成功した。

研究成果

• [文献書誌] Y.Tezuka, A.Tsuchitani, et al.: "Synthesis of θ-shaped Poly(THF) by Electrostatic Self-Assembly and Covalent Fixation with Three-armed Star Telecherlics Having Cyclic Ammonium Salt Groups"Macromolecules. 36(1). 65-70 (2003)
• [文献書誌] Y.Tezuka, R.Komiya, et al.: "Designing 8-shaped Polymer Topology by Metathesis Condensation with Cyclic Poly(THF) Having Allyl Groups"Macromolecules. 36(1). 12-17 (2003)
• [文献書誌] Y.Tezuka, R.Komiya: "Metathesis Polymer Cyclization with Telechelic Poly(THF) Having Allyl Groups"Macromolecules. 35(23). 8667-8669 (2002)
• [文献書誌] Y.Tezuka, K.Mori, H.Oike: "Efficient Synthesis of Cyclic Poly(oxyethylene) by Electrostatic Self-Assembly and Covalent Fixation with Telechelic Precursor Having Cyclic Ammonium Salt Groups"Macromolecules. 35(14). 5707-5711 (2002)
• [文献書誌] Y.Tezuka, H.Oike: "Topological Polymer Chemistry"Prog. Polym. Sci.. 27(6). 1069-1122 (2002)
• [文献書誌] 手塚 育志: "イオン会合性テレケリクスを利用した非線形高分子トポロジーの構築"日本ゴム協会誌. 75(5). 195-200 (2002)