研究概要 |
本研究では、大環状構造を基本単位とする新奇トポロジカル高分子群を、申請者らが独自に開発した末端に環状オニウム塩基を有する高分子前駆体(テレケリクス)の高分子間静電相互作用による自己組織化とその共有結合変換に基づく効率的合成システム(Electrostatic Self-Assembly and Covalent Fixation)よって設計・合成した。この反応システムは、直鎖高分子の適切な位置に導入した、低濃度のイオン性官能基のクーロン引力による自己組織化と、さらにこのイオン性集合状態を、環歪みを持つオニウム塩の対アニオンによる求核的開環反応を利用して共有結合固定するという、全く新しい2段階・逐次高分子反応プロセスであり、これにより従来実用的スケールでの入手が困難であった多様な多環状トポロジーを有する新奇高分子化合物群を提供できる。本年度は、前年度までの成果を基礎に以下の項目について研究を展開した。 1.縮合型およびスピロ型多環高分子トポロジーの構築、 多官能カルボン酸対アニオンを有する環状オニウム塩型直鎖および分岐型テレケリクスを合成し、希釈条件での共有結合化によって分子内環化反応を優先させ、環状構造を含む種々の高分子群を合成する。特に、相補的な官能基対を含む単環状および多環状反応性高分子(多環状テレケリクス)を合成し、これらを利用する高選択的縮合反応(Suzuki-coupling反応、Metathesis反応等)を用いて縮合型(θおよびα,β,γ,δ型トポロジー)、およびスピロ型(8および3連環型トポロジー)多環高分子トポロジーの構築を試みた。さらに、高分子-高分子型自己組織化集合体を経由するK_<3,3>型トポロジーについても検討した。 2.トポロジカル異性体の合成と分離、および構造決定と相互変換 これまでに、化学構造がまったく同一でそのトポロジー形態のみが異なる、高分子化合物に特異的な異性体(トポロジカル異性体)の合成と分離に成功しているが、本年度はその直接的な構造同定を行い、さらに相互変換(異性化)プロセスについても検討した。 以上に加えて、3.環鎖複合トポロジー(トポロジーブロック)の構築および、4.単一サイズ大環状分子の合成についても実施し、これらを総合して「高分子トポロジー化学」の体系化を進めた。
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