研究概要 |
表面プラズモンとは,金属中の電子のプラズマ振動と光が結合してできる表面電磁波の一種であり,"表面局在性"や"電場増強"など通常の光にはない性質を秘めている.本研究は,このような表面プラズモンをナノメートルサイズの極微小空間内に存在する光励起子場(ナノ光源)としてとらえ,機能性超薄膜の形成に向け光重合反応を中心に近接場光化学反応への応用を検討した. 表面プラズモンを共鳴させる光学系には,Kretschmann配置を採用した.プリズムの底面に真空蒸着法によって膜厚50nmの金薄膜を形成させ,その底面で入射光が全反射されるようにHe-Neレーザー光(632nm)を照射し,発生したエバネッセント波を利用して金属表面に表面プラズモンを共鳴させた.この表面プラズモン共鳴条件下,金蒸着膜に種々のモノマー及び重合開始剤を含む反応溶液を接触させ,金膜上に高分子の超薄膜の形成を試みた. 表面プラズモンにともなう電場は顕著な電場増強効果を示し,2光子励起過程を経る光化学反応が期待できる.そこで,通常ならばHe-Neレーザー光に感光できない開始剤の存在下,各種の多官能モノマーの重合反応を行った.しかし,いずれのモノマーについても薄膜の形成は確認できなかった.次に,二種類以上の光重合開始剤や促進剤を併用する複合型光開始系について検討した.ボレート系開始剤n-Bu_4N[B(n-Bu)Ph_4]に加え,感光波長領域をコントロールするためスクワリリウム色素(λ_<max>=624nm)やシアニン色素(λ_<max>=638nm)などのカチオン色素を分光増感剤として共存させたとき,金薄膜上に生成物が確認された.
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