デンドリティックポリ(L-リシン)はL-リシンを用いたデンドリマーであり、ペプチド化学の応用により任意の位置に原子団の導入が可能であること、また生体適合性が期待されることなどの特徴を持っている。また合成過程における保護基の選択によって球状構造表面の半球制御が可能である。このデンドリティックポリ(L-リシン)にPor(Zn)およびPor(fb)を導入したシステムにおける光エネルギー移動の研究を、Por(fb)の蛍光スペクトルを測定することによって行ってきた。3世代にPor(fb)を8個、5世代にPor(Zn)の16個配置した二層型デンドリマーにおいてはエネルギー移動効率が85%であった。また、Por(fb)の16個、Por(Zn)の16個を同一世代(5世代)に、交互に配置した花束型デンドリマーにおいては82%といずれも高効率でエネルギーを移動していた。しかしながら同一世代(5世代)の両半球面にPor(fb)を16個、Por(Zn)を16個配置した半球型デンドリマーにおいては43%と低いエネルギー移動効率であった。このように半球デンドリマーのみエネルギー移動効率が低い理由はどのような原子団の配置によるものかを調べるため、蛍光原子団同士の距離と蛍光との関係に関して知見が多いTrpとDnsを、3世代目、4世代目に導入した半球デンドリマーをそれぞれ合成し、蛍光原子団間の遠隔的な相互作用について検討を行った。蛍光スペクトルから算出された蛍光原子団間の距離は、3世代目に導入したもので15Å、4世代目に導入したもので16Åと同程度であることが分った。また分子モデルから得られた蛍光原子団間の距離も、3世代目に導入したものと4世代目に導入したものとで大きな違いは観られなかった。このことからTrp-Dnsを配置した半球型デンドリマーにおいて、世代が変化しても、二つの蛍光原子団間の実効的な距離は大きく変化しないことが明らかとなった。
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