| 研究概要 |
本研究では,トポケミカル重合による高分子結晶の多次元構造制御に関する反応設計を行うため,まず有機結晶の固相重合反応の基本原理を確立し,その原理に基づいてトポケミカル重合および有機インターカレーション反応による二次元ならびに三次元構造制御された高分子結晶を合成した。さらに高次構造制御された高分子結晶の構造や特性解析について研究を行った。
ムコン酸やソルビン酸誘導体を含む1,3-ジエンモノマーの結晶構造解析データから反応に必要な結晶構造因子を明確化し,重合が起こるためには反応する炭素間距離が適当な範囲内にあることが必要で,スタッキングの距離が重要な因子であることを見出した。さらに,この重合原理(5Åルール)に基づいて,ムコン酸やソルビン酸以外のジエン化合物についての重合反応原理の適用を試み,広範囲にわたる種々のジエンモノマーの結晶構造とトポケミカル重合性の反応設計のための基本となる指針を確立することができた。構造と反応性を評価するためのパラメーターをより精密化し,新たにCH/0やCH/π相互作用などの弱い分子間相互作用を組み合わせてジシンジオタクチックポリマーの合成にも成功した。
つぎに,多次元高分子構造を精密に制御するため,まず二官能性モノマーであるジソルビン酸ジアンモニウムの結晶のトポケミカル重合によって,効率よくラダー型ポリマーの合成を行い,対応する直鎖状ポリマー」との構造や特性の違いを評価した。ムコン酸誘導体から同様の手法でシート状高分子の合成も行った。さらに,様々な官能基を含む層状高分子結晶を合成するため,有機インターカレーションの反応の特徴と機構の詳細を明らかにし,固相重合とインターカレーションの組み合わせることによって層構造が制御された高分子結晶を効率よく合成する方法を確立した。
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