近年、地球環境問題がクローズアップされ、新素材の開発でも、地球環境への負荷の少ない材料の登場が望まれている。また、用途の多様化に伴い高分子材料には強度と同時に多様な機能性の付与が要求されており、これらに応えるには、高分子の新規複合化技術の開発が不可欠となっている。このような社会の要請に応えるために、既に屈曲性ポリマー濃厚溶液中で剛直性ポリマーを合成するIn-situ重合法を開発し、屈曲性マトリックスポリマーと剛直性ポリマーの間に働く水素結合、酸・塩基、電荷移動などの相互作用が複合材料の力学特性に与える影響について検討してきた。そこで、本研究ではIn-situ重合法において、その相互作用の強度を系統的に変え、複合材料の構造及び力学特性に与える影響を検討することにより、高性能複合材料の分子設計の基礎を確立することを目的とした。 屈曲性ポリマー濃厚溶液中で剛直性ポリマーを合成する場合、高分子間に働く相互作用の種類と強度を系統的に変化させて、得られた複合材料の高次構造及び生成ポリマーの分子量、分子量分布に与える影響について検討した。具体的には、4-ビニルピリジン/スチレン共重合体(P4VPy/St)の組成比を種々変化させたマトリックスポリマー溶液中でのポリアミド酸の合成により種々の複合材料を得て、さらにそのキャストフィルムを段階的に熱処理することで、イミド化して得られた複合材料フィルムの高次構造及び力学特性を測定した。その結果、P4VPy/St(25/75)またはP4VPy/St(50/50)溶液中でのポリアミド酸の合成において相互作用の強いP4VPy/St(50/50)からの複合材料の方がイミド化した際に相溶性がよいことが明らかとなり、ピリジン環とポリアミド酸との間の酸・塩基相互作用が複合材料の相溶性に重要であることが明らかとなった。さらに、トリアジン環含有高分子とニトロ化ポリスチレンとの複合材料では、ポリスチレンとの複合材料よりも相溶性が向上したことから電荷移動的な相互作用でも相溶性が向上し、補強効果を示すことがわかった。しかし、引張り強度の増大などを比較するとピリジン環とカルボン酸の相互作用の方が弱い電荷移動相互作用よりも複合化にとって適していることが明らかとなった。これらの系でもIn-situ重合法はブレンド法より分散性のよい複合材料を与えた。
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