研究概要 |
申請者は屈曲性ポリマー濃厚溶液中で剛直性ポリマーを合成する場合、高分子間に働く相互作用の種類を系統的に変化させ、得られた複合材料の高次構造とその力学特性の関係を検討してきた。具体的には、4-ビニルピリジン/スチレン共重合体(P4VPy/St)の組成比を種々変化させたマトリックスポリマー溶液中でのポリアミド酸の合成により種々の複合材料を得、さらにそのキャストフィルムを段階的に熱処理することで、イミド化した複合材料フィルムの高次構造及び力学特性を測定した。その結果、P4VPy/St(25/75)およびP4VPy/St(50/50)溶液中でのポリアミド酸の合成において、より相互作用の強いP4VPy/St(50/50)からの複合材料の方がイミド化した際に相溶性がよかったことから、ピリジン環とポリアミド酸との間の酸・塩基相互作用が複合材料の相溶性に重要であることが昨年度までの結果から明らかとなった。しかし、ポリアミド酸を完全にイミド化するとピリジン環と相互作用するカルボン酸がなくなり、マトリックスポリマー中でポリイミドが凝集するため、分散性が悪くなった。そこで、本年度はこれを改善するために、ジアミン成分の一部に3,5-ジアミノ安息香酸を用い、ジアミン組成を種々変えることにより、P4VPy/St(50/50)中のピリジン環との酸・塩基相互作用の制御を試みた。ポリイミド側鎖に導入したカルボン酸基の含量とP4VPy/St(50/50)との複合材料の商次構造とその力学特性との関係を検討した結果、カルボン酸基の含量が増すに連れて複合材料の相溶性が向上し、引張強度が増大した。さらに、このカルボン酸導入による引張強度の向上は、ブレンド複合材料よりもIn-situ重合法により得られた複合材料の方が相溶性が向上し、その補強効果が増大することが明かとなった。
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