カリックスアレーン[n](CA)はフェノール類とアルデヒド類との縮合反応により生成する環状オリゴマーである。CA類はかご型の構造で、シクロデキストリンやクラウンエーテル類と同様に包接能を有することから、CA類に関する研究はホスト・ゲスト分子挙動に関することが多く、様々なカリックスアレーン類が合成されている。さらに、CA類の特徴は次のように挙げられる。(1)一分子内に多くの水酸基を有する。(2)熱的安定性が高い。(3)高いガラス転移温度(Tg)を有する。(4)高い融点(Tm)を有する。(5)CA類の構造によってはよりよい製膜性を有する。以上のことから、機能性化されたCA類は、耐エッチング性と光反応性に優れた光機能性材料としての展開が期待される。本研究の目的は、カリックスアレーン類を合成原料として使用した、新しい高性能の光機能性カリックスアレーン類の合成と物性評価、およびその応用にある。具体的には、種々のカリックスアレーン類の水酸基の化学修飾により、その分子内に光反応性のカルボン酸エステル基、ノルボルナジエン基、オキセタン基、スピロオルトエステル基等を有する光反応性カリックスアレーン類の合成、光反応性の評価、光反応による物性の変化等について研究を行った。 その結果、3年間の短い研究期間にも関わらず、いくつかの新しい興味ある研究成果が得られたと思われる。分子サイズの小さなカリックスアレーン構造中に多くの光反応性基が集中的に導入されるために、鎖状高分子とは異なり優れた特性が発現された。高い屈折率変換が達成され、高性能な光スイッチング材料や光回路としての応用が可能であることが判明した。さらに、オキセタン基やスピロオルトエステル基等を有するカリックスアレーン類の光反応では、非常に密度の高い架橋が可能となったことから、解像度、感度、耐熱性、接着性等の優れた高性能の感光性材料として期待できる。今後、本研究の成果が参考となり、高分解能なフォトレジスト材料や高性能な硬化材料および光回路が開発され、将来的には、大情報量社会に対応できる大容量の光記憶材料の発展に貢献できることを期待したい。
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