研究概要 |
DNA二重らせん鎖はπ電子を多く持つ塩基対が平行に配列した構造をとっており、分子ワイヤとして興味深い。本研究は、DNA-脂質複合体のキャストフィルムを一軸延伸することにより、DNA二重らせん鎖が一方向に配向した薄膜を電極上に作製し、DNA鎖に沿った電子移動を実現することを目的とし、以下の結果を得た。 1) サケ精子から温和な条件でDNAを精製し、分子量の大きい(30,000bp, Mw : 3,000万,分子長10μm)のDNAを単離した。分子量についてはゲルシフトアッセイから求め、分子長は蛍光顕微鏡あるいはAFM測定から求めた。 2) DNA中のリン酸アニオンと等モルのカチオン性脂質を加えて、DNA-脂質複合体ポリイオンコンプレックスの沈殿として得た。これをクロロホルムなどの有機溶媒に溶解して、テフロン板上にしてフィルムを得た。 3) 基板からはがして一方向に延伸した。X線回折によりフィルム中での塩基間距離、重らせん鎖間の距離や配向方向などを決定した。二重らせん鎖の配向は、偏光紫外吸収スペクトルの二色性比からも求めた。 4) 延伸したDNA配向化フィルムをくし型電極(電極間距離:Sμm)に橋渡しする方向に固定し、直流電導度を求めたところ、1×10^<-3>Scm^<-1>の値を示した。一方、フィルムを90°回してDNAが電極と橋渡ししない方向にすると、10^<-6>S^<-1>cm^<-1>とほとんど電気が流れず、DNA配向フィルムは大きい異方性をもつことがわかった。
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