研究概要 |
所定濃度のCu(II), Fe(II)およびH_2SO_4を含む電解液中で黄銅鉱電極のアノード分極曲線を298Kにて測定し,黄銅鉱アノード溶解の電位依存性と最適電位に及ぼす液組成(H_2SO_4,Cu^<2+>,Fe^<2+>濃度)の影響を調べた。13年度に報告したように,Cu(II)とFe(II)が共存するとアノード分極曲線には活性態-不働態挙動が認められ,電位の上昇に伴ってアノード電流が増大してピーク値に達した後に低下し(活性態),高電位域では電流の電位依存性は小さくなる(活性態域)。H_2SO_4濃度が0.1kmol m^<-3>以上になると活性態域のピーク電流は低くなり,過度に高い濃度のH_2SO_4が黄銅鉱のアノード溶解反応を抑制することが示唆された。ピーク電位はH_2SO_4濃度によらず,ほぼ一定であった。一方,ピーク電位はCu(II)とFe(II)濃度には顕著に依存し,Fe(II)濃度が10倍になるごとに約13mV, Cu(II)濃度が高くなると約30mVづつ高電位にシフトした。このピーク電位は黄銅鉱アノード溶解反応の速度が最大になる電位(最適電位)とみなされる。 陰イオン交換膜で隔離された2つの電解槽からなる回分式の電位制御浸出装置を試作した。この装置では,黄銅鉱の溶解に伴って消費されるFe(II)へと還元される酸化剤Fe(III)を電解によって再生し,反応過程の溶液の酸化還元電位(Fe(III)とFe(II)の濃度比により定まる電位)を制御する。本装置を用いて黄銅鉱粉末試料(中位径6μm)の浸出実験を液温353Kにて行った。電位が過度に高い場合には,黄銅鉱が不働態化して90%以上の浸出率を得るのに3日程度の時間を要したが,電位を最適電位付近に保った場合には約6hで90%以上の浸出率を得た。
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