地球温暖化現象の要因として二酸化炭素の排出増加が挙げられ、その対応策として各種隔離技術の研究が進められている。しかしながら、二酸化炭素の長期的挙動は解明されていないのが現状である。地下帯水層に圧入された二酸化炭素は気相・液相・固相となって安定するが、液相に溶解した二酸化炭素は帯水層内を移流分散により拡散する。その際孔隙レベルの不均質性が移流分散挙動に与える影響を評価することが必要となる。本研究では、地下帯水層の岩質を想定してベレア砂岩、炭酸塩岩、またガラスビーズを用いた実験を行った。流動モデルとして移流分散(CDE)モデル、ならびに流れ部分と淀み部分を考慮したCoats-Smithモデルを採用し、実験結果とのマッチングを行った。ガラスビーズやベレア砂岩についてはCDEの適用ができた。また、得られた分散係数はサンプルの種類に関係なく流速に比例することが確認できた。一方、ドロマイトに対してはCDEの適用ができなかった。これは続成作用の過程によって形成される二次孔隙が存在し、孔隙レベルでの不均質性のためと考えられる。これを反映した分散モデルであるCoats-Smithモデルを適用したところ、良好なマッチング結果を得た。本実験で使用したサンプルでは淀み部分が40%程度含まれており、孔隙レベルの不均質性を有する岩石は同じ粒径でもそれを有さない岩石やガラスビーズと比べて大きい分散係数を持つ可能性があることがわかった。孔隙レベルの不均質性を有する帯水層に対して、分散をCDEで表現する現状のシミュレータを用いる場合、Coats-Smithモデルから導かれる分散係数を用いることは大きな誤差を生じさせる危険があり、近似的予測結果を得るためには見かけ上大きな分散係数を設定する必要がある。
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