研究概要 |
高レベル放射性廃棄物の処分施設においては,深部地下水環境を維持するために,従来のダム建設やトンネル建設などでは透水性改良の対象とされていなかった低透水性の岩盤の微小亀裂についてもシーリングを行い,透水性を改良することが必要となる。しかしながら,従来のグラウチング工法ではこのような低透水性岩盤の微小亀裂を十分に改良することは困難であり,新たなグラウチング工法の開発が必要である。そこで,本研究では,グラウト材の流動性を向上させて目詰まり発生を抑制すると考えられる動的注入工法に着目して系統的な検討を行っている。動的注入工法は一定の定常注入圧に振動圧を付加してグラウトを注入する工法である。本研究では,長時間にわたってグラウト注入が可能である実用的な動的注入装置の開発,静的注入工法に対する動的注入工法の優位性の確認,動的注入工法によるグラウト注入メカニズムの解明,対象岩盤に応じた効果的な注入仕様の決定方法の確立,などの課題に取り組んでいる。これまでに,室内実験および現場実験において,静的注入と比較して動的注入では初期注入流量が増加し,また総注入時間も増加することを確認しているが,今年度は,グラウト材の動的注入メカニズムに関して,グラウト材の(1)流動メカニズム(流動性の向上)と(2)充填メカニズム(目詰まり発生の抑制)の2つに分けて詳細な検討を行った。まず,(1)流動メカニズムを明らかにするために,人工亀裂模型を用いた室内実験および理論的検討を行い,注入パラメータと流体の見かけ粘性の低下に関する関係を明らかにした。次に,(2)充填メカニズムを明らかにするために,現場実験および理論的検討を行い,注入流量の時間変化および注入パラメータとの関係を明らかにした。これにより,対象とする亀裂に対する最適注入パラメータを数値シミュレーションにより決定することが可能となり,注入システムの合理的な構築が可能となった。
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