研究概要 |
岩盤不連続面(以下,単に不連続面という)のせん断力学特性が寸法依存性を示すことは,多くの研究により明らかにされてきている。その研究の代表例としてBartonらによる不連続面表面粗さ係数(JRC)の寸法依存性に関する研究がある。JRCが寸法依存性を示すのは,不連続面の表面形状が一般的に自己アフィンのフラクタルであり,不連続面の表面形状を構成している凹凸の勾配が,その凹凸寸法の増加にしたがって緩やかになるためである。このことから,彼らはJRCが不連続面寸法に依存するものとして議論している。しかし,不連続面の寸法が大きくなってもかみ合っている凹凸の寸法が同じであればせん断力学特性に対する表面形状の影響は同じと考えられるであろう。したがって,不連続面のせん断力学特性の寸法効果は,不連続面そのものの寸法よりも不連続面上のかみ合っている凹凸の寸法に依存するものと考えるのが妥当である。 本研究ではこのことを確かめるため,フラクタルを用いてかみ合わせ寸法を1mm,2mmm,4mm,8mmに制御した28mm×28mmの大きさの岩石不連続面供試体モデルを準備してそのせん断試験を行い,不連続面のせん断力学特性に及ぼす不連続面のかみ合わせ寸法の影響について調べた。その結果,かみ合わせ寸法の増加にしたがってせん断強度が低下すると同時に最大せん断強度が発現するまでの垂直変位量が小さくなる傾向が観察された。これにより,不連続面の寸法でなく不連続面のかみ合わせ寸法がそのせん断力学特性に影響することを定性的に示すことができた。今後,不連続面寸法の影響についても検討する必要がある。このことから,大きな不連続面で大きな寸法の不連続面にも対応できるように,新たに導入した高精度シリンジポンプと油圧ピストンセル,剛性枠およびせん断箱からなる簡易せん断試験装置を設計製作した。
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