研究概要 |
これまで,岩盤不連続面(以下,単に不連続面という)のせん断力学特性の寸法依存性について,不連続面のフラクタルモデルに基づき新たな不連続面表面粗さの基準となるJRC線図を作成し,JRC線図による不連続面の表面粗さとその寸法依存性の評価法を提案してきた。 本研究ではこのJRC線図による不連続面のせん断力学特性の寸法依存性評価法の妥当性を確かめるため,高精度シリンジポンプと油圧ピストンセル,剛性枠およびせん断箱からなる簡易せん断試験装置を新たに設計・製作し,それを用いてせん断試験を実施した。せん断試験に用いた供試体は,フラクタルモデルを用いて不連続面形状の数値データを生成し,NCモデリングマシンを用いてその不連続面を削り出し,それを母型にしてモルタルを用いて人工的に作製したものである。このようにすることで,不連続面のかみ合わせ,表面粗さ,材料強度を任意に変えた供試体の作成に成功した。かみ合わせ寸法を2mm,4mm,6mmに制御し,かみ合っている凹凸の数を同程度とするため,それぞれの不連続面寸法を30mm×30mm,60mm×60mm,90mm×90mmとした供試体に対してせん断試験を行った結果,かみ合わせ寸法の増加にしたがってピークせん断強度が低下する傾向が確認された。また,各供試体に対してBartonらの実験式を用いてJRCを評価し,それとJRC線図から評価されるJRC及びBartonらによるJRCの寸法効果の評価式によるJRCとの比較を行った。その結果,JRC線図から評価されるJRCの値は,Bartonらの評価式による値より実験値から求まるJRCに近い値を示すことがわかった。さらに,砂岩や花尚岩の不連続面に対するせん断試験結果を用いて同様の評価を行ったところ,かみ合わせ寸法を正しく評価しJRC線図に適用すれば不連続面のJRCを正しく評価できることがわかった。
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