日本の経済技術援助により、1986年からミャンマーで9基の米籾穀専焼式発電プラントが稼働しているが、そこから排出される大量の燃焼灰の処理が問題になっている。この籾殻灰の高度利用および新規素材化を目的として、昨年度は灰自体のキャラクタリゼーションを行い、さらにこの籾穀灰を出発原料として、高結晶性・高純度の白色クリストバライト粉体、各種(アナルシム、A型、X型およびP型)合成ゼオライト、さらにマクロモレキュル粘土鉱物として径数nm、長さ数μmオーダーのイモゴライトの繊維状結晶が合成できることが示された。今年度はさらに、米籾穀灰を3Mの水酸化ナトリウム水溶液中で80℃、1日間処理することにより、ほほ完全に溶解したケイ酸ナトリウム水溶液に所定量のアルミン酸ナトリウムと種結晶を添加して水熱処理することにより、一連のSi/Al比のFAU(faujasite)型ゼオライト(LSX型-X型-中間型-Y型)が合成された。得られたゼオライト試料は、いずれも市販の同型ゼオライトに比較して同等の結晶性、イオン交換能、細孔容積を示す。これにより、高機能性細孔質ケイ酸塩素材として現在工業生産されているLTA型およびFAU型ゼオライトの合成用ケイ酸原料として、シリカゲルに劣らぬ性質をこの米籾穀灰が有していることが示された。ゼオライト合成用ケイ酸原料として検討されている廃棄物として他に、石炭灰、一般ごみ焼却灰、下水道汚泥などが挙げられるが、残留成分(重金属類、砒素、ホウ素など)が少ない点で米籾殻灰は有利と考えられる。また、米籾穀のシリカ-共存元素系のシリカ側端成分領域の相図を実験的に再検討し、非晶質-石英-クリストバライト-トリディマイトー-融液系における共存元素のフラックス効果を定量的に求めた。これにより、米籾殻灰の性状によらない原料調整が可能であることが示された。
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