研究概要 |
イネ緑葉のミトコンドリアゲノムの全塩基配列を決定するため、すでに当研究室でクローニングしてあったイネ品種「日本晴」のミトコンドリアゲノム全体をカバーする54個からなるラムダクローンを用いて塩基配列を決定した。その結果、イネミトコンドリアゲノムの全長は490,520bpであり、ゲノム上にある遺伝子として、35個のタンパク質をコードする遺伝子、3個のリボソームRNA(5S,18S,26S)遺伝子、および18個の転移RNAの遺伝子が同定された。転移RNAでは発現していないのもあり、少なくとも7種類のアミノ酸に対応するtRNAはコードされておらず、それらのtRNAは細胞質から輸送されると考えられる。これらの結果は同じイネの葉緑体ゲノムに比べ、ミトコンドリアゲノムでは遺伝子密度が非常に低いことを示している。高等植物ではすでにアラビドプシスとテンサイでミトコンドリアゲノムの全塩基配列が決定されているが、本研究の結果は単子葉植物では初めての成果であり、もちろん主要穀類の作物で初めてである。 イネ・ミトコンドリアゲノムに於けるエディティングについても調べた。植物ミトコンドリアゲノムにおいては、タンパク質をコードする遺伝子のmRNAの大半は、脱アミノアシル化(Deamination)機構を介した部位特異的な転写後修飾の一つである、RNAエディティングを受ける。450塩基以上をコードしうる全てのORF18個と、エディティングが調べられていない遺伝子の転写を、cDNAを用いたRT-PCR法によって解析した。その後、RNAエディティングサイトを調べるため、RT-PCRによって転写が確認されたORFに関しては、そのPCR産物を鋳型としたダイレクトシークエンスを行った。その結果22個の遺伝子に関しては、RT-PCRによって全て転写が確認でき、その大半でRNAエディティングが見られた。
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