研究概要 |
サツマイモ野生種における胞子体型自家不和合性の分子的機構を解明することを目的として,本研究では自家不和合性遺伝子座(S遺伝子座)を中心とするゲノムDNA領域の塩基配列の解析を中心とする研究を行っている.昨年度までに,S遺伝子座を含むAFLPマーカー連鎖地図が作成され,S遺伝子座領域をカバーする全長約300kbのBACコンティグが得られている.本年度はこの約300kbについて,ショットガン法により全塩基配列の解析を行った.その結果,高度の反復配列が存在すると推定された3カ所の短いDNA領域を除いてそれ以外の全塩基配列が解読された.この塩基配列に基づいてGeneScanによる解析から45個のORFの存在が推定された.さらに,RT-PCR法,BACクローンのドットブロット法およびノーザンブロット法によって遺伝子の発現解析を行った結果,この300kbのS遺伝子座領域では少なくとも28個の遺伝子が発現していることが明らかになった.このうち,4個の遺伝子は雌蕊の柱頭で特異的に発現しており,5個の遺伝子は花粉を含む葯で特異的に発現していることが明らかになり,これらは生殖器官特異的遺伝子であると推定された.これら以外の遺伝子は柱頭や葯以外の栄養器官でも発現していた.今回新たに見出されたこれら生殖器官特異的遺伝子は,有力な自家不和合性遺伝子候補と考えられるが,データベース検索において相同性の高い遺伝子がヒットしていないことから,これらは新規の遺伝子である可能性が高いことを示唆している.今後これらの候補遺伝子について,cDNAクローンの解析によりS遺伝子型間の多型性を調査するとともに,RNAiなどの形質転換実験から遺伝子の機能を明らかにする予定である.
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