研究概要 |
本研究は(1)脱粒性遺伝子Sh3の単離・同定,(2)栽培イネにおける非脱粒化機構の解明の2項目からなり,研究実績の概要は以下のとおりである. (1)脱粒性遺伝子Sh3の単離・同定 Sh3のマップベースドクローニングに関しては,高精度マッピングを継続し,候補となる領域を約5kbに絞り込んだ.この領域には1つのORFが予測されたので,この領域(5.5kb)をO.glumaepatulaからPCR増幅してクローニングし,栽培イネ(台中65号)に形質転換により導入したところ,形質転換イネは強度の脱粒性を示し,また,野生イネ並の離層の形成が観察された.この結果より,5.5kbの領域に含まれるORFがSh3であると結論した.そしてO.sativaの非脱粒化はSh3の機能喪失が要因であると結論付けた.現在,Sh3のcDNAのクローニングおよび発現解析を行っている. (2)栽培イネにおける非脱粒化機構の解明 O.sativaとO.glaberrima(IRGC104038)の戻し交雑後代から得られたSh3およびiSh3(Sh3に連鎖する脱粒性抑制遺伝子)の両方が分離する集団を約4000個体育成した.この材料により,iSh3の遺伝的解剖が可能となった.また,(1)の結果をもとに野生イネ数種とO.glaberrimaのSh3のゲノム塩基配列を調査した.その結果,O.glaberrimaのSh3はその祖先種O.barthiiと全く同じアミノ酸配列をもつと予測され,O.glaberrimaの非脱粒化はSh3の機能喪失によるものではないというより強い示唆を得た.
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