本研究では、複数の脂肪酸代謝に関する突然変異体に組み換えDNA技術を用いた特定の脂肪酸の合成系路の強化および脂肪酸転移酵素遺伝子の改良を組み合わせる事により、複数の脂肪酸の組成を同時に変化させたダイズ品種の作出を目指している。 本年度の研究により、我々の研究室で得られている複数の高オレイン酸突然変異系統において、小胞体型w-6脂肪酸不飽和酵素をコードするGmFAD2-1遺伝子に欠失が生じていることが明らかになったことから、現在、もう一つの小胞体型w-6脂肪酸不飽和酵素遺伝子であるGmFAD2-2上に突然変異が生じた系統のスクリーニングを進めている。 また我々は、ダイズ小胞体型w-3不飽和化酵素遺伝子であるGmFAD3-1を強化した改良遺伝子をダイズに導入するため、パーティクルガンを用いたダイズ栽培品種への遺伝子導入条件についても検討を進めており、未熟胚からの不定胚誘導効率の改善には培地へのピログルタミン酸の添加が有効であり、その後の不定胚の生育促進にはポリペプトンSの添加が効果的であることを見出しており、現在GFP遺伝子を用いた遺伝子導入および選抜条件の検討等を進めている。 さらに、ダイズ種子の脂質構成(TAG/DAG比)を変化させることを目的としたDGAT遺伝子の単離については、本年度の研究においてほぼ完全長と考えられるcDNAのクローニングに成功しており、現在、プロモーター領域等も含むデノミツククローンの単離を進めており、今後、ダイスDGAT遺伝子の構造を明らかにするとともに得られたcDNAを利用してダイズのDGAT遺伝子の機能を抑制した個体の作成を行う予定である。
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