本研究は、複数の脂肪酸代謝に関する突然変異体に組み換えDNA技術を用いた特定の脂肪酸の合成系路の強化および脂肪酸転移酵素遺伝子の改良を組み合わせる事により、複数の脂肪酸の組成と脂質合成効率をを同時に変化させたダイズの作出を目指して行った。 始めに、我々の研究室で作出した複数の高オレイン酸突然変異系統を用いてその原因遺伝子の同定を試み、KK21およびM23系統において小胞体型ω-6脂肪酸不飽和酵素をコードするGmFAD2-1遺伝子に変異が生じていることを明らかにした。これに加えて、低リノレン酸系統のM24では、小胞体型ω-3不飽和化酵素をコードする遺伝子の一つであるGmFAD3-1a遺伝子に変異が生じており、J18およびM5系統ではGmFAD3-1bに変異が生じていることも明らかにした。 我々は、ダイズ未熟胚からの不定胚誘導効率の改善には培地へのピログルタミン酸の添加が有効であり、その後の不定胚の生育促進にはポリペプトンSの添加が効果的であることを見出した。そこで、この条件下で日本のダイズ栽培品種への遺伝子導入を試み、九州126号を用いて3系統のEGFP遺伝子を導入した組換え個体を得た。また、ダイズのGmFAD3-1a遺伝子を用いて、リノレン酸含量を約10倍以上増加させた組換えイネを作成した他、効率的にRNAiを誘導するベクターも作成し、ダイズ脂質の遺伝子組換え技術を用いる改良に対しても、これらの手法が有効である事を明らかにした。 さらに、ダイズ種子の脂質構成(TAG/DAG比)を変化させることを目的として、完全長のORFを含むcDNAおよびゲノミックDNAのクローニングに成功した。
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