研究概要 |
平成15年度は,東北地方中北部における主要普及品種である「あきたこまち」および「ひとめぼれ」と当地方を対象に最近育成された品種・系統および遺伝的背景の明瞭に異なる品種を供試し,農学部構内および附属農場の水田に前年度までと同様な方法で栽培し比較検討を行なった. 得られた結果の概要は,以下の通りである. 1。2003年は6月下旬まで平年並みかそれ以上の気温および日射量で経過したものの,それ以降7月末までの長期間日平均気温が平年より1.5〜4.5℃程度低く,日照時間も平年の6〜7割程度で推移した.その結果,いずれの品種も穂首分化期頃までは順調に生育したものの,減数分裂期は7月中〜下旬の低温期と重なった結果,不受精籾が多発し,登熟歩合が著しく低下した結果,坪刈収量は230〜660g/m^2であり,2001年および2002年と比べていずれの品種も著しい低収となった.主要な要因としては,7月第3半旬を除く6月下旬以降7月末までの低温と日照不足に伴う不受精籾増大による登熟歩合の低下と玄米千粒重の低下が挙げられる. 2。不稔籾の発生程度は,品種の熟期と耐冷性程度の相違によって著しく異なっており,晩性品種に比べて早生および中生品種において,また,耐冷性程度の低い品種において不受精歩合が高いことから登熟歩合が低下し減収となっていた.その結果,これまで2年間の収量と比較すると,耐冷性程度が極強とされている「はたじるし」および「ひとめぼれ」は減収程度は比較的小さかったものの,やや弱とされている「ふくひびき」の減収程度は明らかに大きかった.また,耐冷性程度が極強に分類されている「はなの舞」であっても,減数分裂期がより低温であったことから不稔籾の発生が上記2品種より多く,収量はかなり低かった.すなわち,2003年度における品種による収量の相違は,各品種の減数分裂期が7月中〜下旬のいつの低温期に対応したのかによって,また,品種の耐冷性程度の違いによって異なっていた. 3。穎花分化期以降の全乾物重および器官別乾物重の推移を比較したところ,不稔籾の発生が少なかった品種は登熟期前半に稈+葉鞘重は減少したものの,不稔籾の発生が多かった品種の稈+葉鞘重は明らかに増加しており,耐冷性程度の低い品種ほど稈+葉鞘重の増加程度は大きかった.
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