研究概要 |
本研究では,カスパリー帯,下皮・内皮の発達程度,導管の構成,種子根軸への導管連絡などの水吸収・輸送に関わる内部組織構造などの形態学的な情報を基にして,ソルガム種子根系(8日齢)における水の吸収・輸送構造を組み立てた.その結果,吸水能力の高い側根と,通導性が高いと考えられる種子根軸とによって構成されている,種子根系基部側で水吸収が盛んで,向頂的に減少していく構造を形成していると推察した. 一方で,アポプラストのトレーサーであるSulphorhodamine G水溶液にソルガム(8日齢)を移植後,一定時間後に根系を採取し,根の各部位に蓄積したSulphorhodamine Gの量を測定することによって実際の水吸収量を推定した.その結果,種子根系全体に対して,表面積でも,Sulphorhodamine G蓄積量でも,側根が約3分の2を占め,側根が主要な水吸収器官であることが明らかとなった.さらに,根の種類や齢によって,吸水速度が異なることが明らかとなった.しかし,吸収が最も盛んな部位は根系基部ではなく,根端から約15〜20cmの部位であった.したがって,内部組織構造からのみでは,実際の水吸収・輸送のすべての説明することができず,齢の進行にともなうシンプラスト経由の水移動や導管の水通導性,種子根内の導管間連絡などを考慮する必要性が示された. 以上の結果,ソルガム種子根系を構成する根のうち,側根の間には異形性が存在し,これらの根の間では,水の吸収・輸送能と関わる内部組織構造が異なること,実際の水吸収においてもこれらの根の間では,吸収能が異なることが明らかになった.さらに,これら側根と種子根軸で構成される根系において,吸水能は,根の種類に加えて,齢の影響を強く受けており,異なる根や部位間で,役割を分担しつつ吸水・輸送機能を発揮していることが示された.
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