研究概要 |
野生種Oryza rufipogonと栽培種O. sativaとの戻し交雑系統BC2F2について成長解析と収量調査を行った(日本作物学会第212回講演会にて発表).これらの交雑系統の中には栽培種よりも有意に高い純同化率と相対成長率を示すものがあり,乾物をより茎部や葉身へ分配し,また全葉面積を拡大させるなどの特徴を有していた.また,いくつかの交雑系統は籾収量が栽培種よりも有意に高く,これは千粒重と登熟歩合の増加によるものであった.このように,野生種O. rufipogonは栽培種の成長と収量を向上させる遺伝子を有しており,その基礎として同化速度も増加させることが明らかになった.これらの交雑系統では光合成能力も増大することをすでに明らかにしてきたが,そのメカニズムについては引き続き研究を行い,現在のところ炭酸固定酵素を生体内で活性化させる酵素量の増加が原因の一つであるとみられる(日本作物学会第213回講演会にて発表予定).現在,これらの情報から有用な領域をもついくつかの系統について不要な野生種の遺伝子の除去と有用領域の累積を目標とした研究に着手している. 本研究では,さらに他の野生種を用いた研究も進め,栽培種と同じAゲノムで最も遠縁のO. meridionalisとの交雑およびBC2F2の作出も終えている.この組合せの場合にも光合成能力が増加することが認められ,他の形質を含む量的遺伝子座の解析を進めている(日本育種学会2002年春季講演会にて発表予定).
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