研究概要 |
イネ野生種Oryza rufipogonと栽培種O. sativaとの戻し交雑系統BC2F1の最大光合成能力についての結果はすでに報告していたが,これらの系統の炭酸固定酵素Rubiscoとその活性化酵素Rubisco activaseの定量を行い,光合成能力の増加の原因について相関による解析を行った.親として日本型品種の日本晴を用いた場合には活性化酵素量との関係が,インド型品種IR36の場合にはRubisco量との関係が密接であった.また,相乗効果の指標としてRubisco×Rubisco activase量との関係を調べた結果,いずれの品種を親とした場合にも有意な正の相関が認められた.このように野生種が栽培種の最大光合成能力を増加させる機構には炭酸固定に関係する要因が含まれていることを示している.これらの結果の一部は学会にてミニシンポジウムを企画,開催し,口頭にて発表した(日本作物学会紀事第71巻別号1). 本研究では,他の野生種を用いた研究も進め,栽培種と同じAゲノムで最も遠縁のO. meridionalisとの戻し交雑BC2を作出した.この組合せの場合にも光合成能力が増加し,光合成を増加させるいくつかの遺伝子領域があることが認められた(日本育種学会2002年春季ならびに秋季講演会にて口頭発表). さらに,光合成能力の増加の原因を探るために予備的に異なるガス組成下におけるガス交換速度の測定とそのモデル化を行った.高い光合成能力を示す交雑系統では,二酸化炭素に対する親和性は必ずしも高くないが,最大活性が極めて高く,また葉内の拡散抵抗値や明中の暗呼吸速度が低い特性が認められた.これらの結果は次年度に公表する予定である.
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