研究概要 |
野生イネOryza rufipogonと栽培イネO. sativa(品種;日本晴およびIR36)との戻し交雑系統BC2F1をさらに自殖した後代のBC2F4系統について光合成能力,炭酸固定酵素Rubiscoおよびその活性化酵素Rubisco activase含量,成長関数および収量構成要素の調査・測定を行い,親品種との比較を行った.また,形質によりBC2F1系統での値との比較検討も行った. 日本晴交雑系統では,大気レベルでの光合成能力や純同化率が約12%高く,相対成長率や収量では20%以上高いBC2F4系統が認められた.しかしながら,BC2F1系統で見られた最大光合成能力などの優れた形質が徐々に消失する傾向にあった. 一方,IR36との交雑BC2F4系統では依然として高い光合成能力が維持されており,交雑集団の約67%が親の平均値よりも高い能力を有していた.これは,主として生体内での単位Rubisco量当りの光合成速度が高いことが1原因で,Rubiscoの活性化酵素であるRubisco activase含量が高いことと関連するものと考えられた.また,系統世代間の関係を調べた結果,BC2F1系統とBC2F4系統との間にはゆるやかな比例関係があり,栽培種の光合成能力を向上させる遺伝子領域が固定されてきている可能性がある.これらの有望系統については今後大気レベルの光合成能力や収量の調査を行うことにしている. いずれのBC2F4系統についても量的形質遺伝子座の解析を再度進めており,BC2F1の場合と比較検討することにしている.
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