研究概要 |
本研究は,近く予想されている世界的規模での食料不足に備え,収量の向上には光合成機能の改良が第一であるという立場から,栽培種を生み出した近縁の野生種に着目し,その野生種が有する遺伝子が光合成の能力や収量の向上に寄与できるかを調査したものである.得られた結果の概要は以下のとおりである. 野生Oryza rufrpogonとの戻し交雑集団BC2F1の最大光合成能力は栽培親品種日本晴,IR36より20%前後の個体で高くなり,最大では60%も増加することが明らかになった.また,この生理的原因としては炭酸固定酵素Rubiscoの増加やその活性化酵素Rubisco activaseの増加があるものと考えられた.これらの特徴はより後代のBC2F4でも確認され,大気レベルでの光合成能力,さらに一部は成長量や収量が優位に高いことも明らかになった. 次に,これらの交雑集団の個々の量的形質遺伝子座(QTL)の解析を行ったところ,この野生種由来で栽培種の光合成能力を増大させるQTL領域が見つかり,この野生種由来のQTL領域をもつ日本晴を育成し,その光合成能力を調査した結果,この準同質遺伝子系統の光合成能力は大気および飽和の炭酸ガス濃度の両レベルで高く,これらのQTL領域が光合成能力の向上に有効であることがわかった. 以上の結果は今後の光合成機能の強化とそれに引き続く多収化への一つの方法を示したものである.
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