研究概要 |
1,果実の水チャネル (1)セイヨウナシでは果実の生長初期に液胞膜水チャネルの発現が高かったが、ブドウでは水チャネルの蓄積が果実生長期間を通して大きく変化しなかった。このため水チャネルは果実肥大より、水分調節に関わる可能性が高い。 (2)セイヨウナシの液胞膜水チャネル遺伝子の発現は果実の生長初期に顕著に高かったが、細胞膜水チャネル遺伝子の発現は果実生長期間を通してほぼ一定であった。器官別の遺伝子発現はいずれも果実での発現が顕著に高く、果実での水チャネルの重要性が明らかとなった。 (3)細胞膜2型リン酸化した状態を特異的に認識する抗体を用いてリン酸化状態を調べたところ、培養細胞に塩ストレスと浸透圧ストレスを与えた時と、日中のセイヨウナシ果実でリン酸化状態が低下し、水チャネルが閉じることが示唆された。 2,ダイコンの水チャネル (1)細胞膜型と液胞膜型水チャネルはいずれも、幼根・胚軸の中心柱、葉柄の維管束鞘など、成長の盛んな細胞あるいは維管束周辺など水透過量の多い細胞で、転写・翻訳レベルが高く、生理的合目性に合うと考えられた。 (2)個々の遺伝子を酵母で発現させ、水透過能を測定したところ、細胞膜2型と液胞膜型グループは水チャネル機能を確認できたが、細胞膜1型では検出できず、細胞膜1型は水透過以外の役割をもつ可能性が高い。 (3)ダイコン実生に、浸透圧ストレスあるいは植物ホルモンを与え、mRNAとタンパク質レベルの変化を解析した。細胞膜1型と液胞膜型は大きな変動を示さず、細胞膜2型が変動し環境応答性の高い分子種であることが明らかになった。 (4)ダイコン実生胚軸の皮層、塊根柔組織の水透過率は、いずれも水チャネルの量の多さを反映して、300-500mm/secの高い値を示した。
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