研究概要 |
モモの低温要求性の発現段階を中心に,覚醒段階での人為的調節および低温要求性の遺伝的制御を含め,以下の点について検討を行った.1)環境と樹体要因が低温要求性の発現時期と量に及ぼす影響.多低温要求性品種では、7月上旬より新梢基部のえき芽は休眠に移行し、9月には深い休眠状態に達すること、導入期においても石灰窒素の発芽促進効果が得られること、気温、日長は休眠導入の開始に影響しないことが明らかとなった。2)低温要求性の異なる品種の発芽・開花特性の比較.少低温要求性品種においては、低温遭遇350時間の早期加温でも高い発芽率が得られ、正常な開花がみられた。これらの品種では、休眠完了後、温度感応性が増大し、より早い開花がもたらされるものとみられた。3)低温要求性の異なる穂木,台木を組み合わせた樹の生長様相 発芽・開花は穂木の低温要求量に大きく依存すること、葉芽の発芽には台木の低温要求性が影響することが示された。4)雌性器官生育育に及ぼす休眠覚醒後の温度環境の影響 休眠完了後の雌性器官の退化は、高温により助長され、結実率の低下の一因となっていることが示された。5)各種の休眠覚醒物質処理が低温要求性の異なる品種の発芽に及ぼす影響 シアナミド、石灰窒素は、二硫化アリルに比べ休眠打破効果が大きいが、休眠最深期には効果が小さいことが示された。6)芽の休眠過程における関連遺伝子の発現 休眠期ならびに休眠覚醒期の花芽と葉芽からmRNAを抽出し,サブトラクション法により解析したところ,休眠期と休眠覚醒期で転写量の異なる遺伝子がいくつか見出され,その中にcell cycleの制御に関わっている遺伝子が含まれていた.7)多低温要求性品種と少低温要求性品種の交雑個体の低温要求性 '白鳳'と少ない低温要求性品種の交雑後代において、'白鳳'に比べ、低温要求量は低減した。
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