研究概要 |
昨年度までの研究で、タバコモザイクウイルス(TMV)の細胞内での効率のよい増殖に必須なシロイヌナズナ膜蛋白質TOM1,TOM2Aの同定と細胞内局在性の解析を行った。その結果、TOM1はTMVの複製蛋白質と相互作用し、感染細胞内でTMVの複製複合体と共局在することが明らかとなった。このことから、TOM1はTMVの複製複合体の構成要素として複合体を膜につなぎ止める役割を担う可能性が考えられた。さらに、細胞分画法による解析により、膜に結合していないTMV複製蛋白質はRNA合成活性をもたないことが判明し、TMV複製蛋白質は活性を発現するために膜に結合することが必要であることもわかった。一方、TOM2Aについては、液胞膜上でTOM1と共局在したものの、TMV複製蛋白質との相互作用は検出されず、その機能は不明であった。そこで本年度は、膜蛋白質同士の相互作用の有無を検討できる酵母two hybrid systemの一種であるsplit ubiquitin systemを用いてTOM1とTOM2Aが相互作用できるか検討した。その結果、TOM2AはTOM1ともTOM2A自身とも相互作用しうることが明らかになった。前述の結果とあわせ、TMVの複製複合体はTOM1の存在する膜上で形成されるが、TOM2Aが共存する液胞膜上では複製複合体形成がさらに効率よく起こる可能性、およびその過程でTOM1-TOM2A多量体形成が重要である可能性が示唆された。
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