研究概要 |
シロイヌナズナのTOM1およびTOM2A遺伝子は、タバコモザイクウイルス(TMV)の増殖に必須な宿主遺伝子として遺伝学的に同定された。本研究では、これらがTMVの複製過程でどのように機能するのかを知るために以下の二点を検討した。(1)TOM1,TOM2A蛋白質の細胞内局在性:TOM1あるいはTOM2A蛋白質とgreen fluorescent protein (GFP)の融合蛋白質を発現するタバコBY-2培養細胞形質転換体を作製した。これらの細胞を蛍光顕微鏡で観察したところ、いずれにおいても主として液胞膜にGFPシグナルが観察された。また、イオディキサノール密度勾配遠心を用いた細胞分画法により、観察されたGFPシグナルが内在性のTOM1あるいはTOM2Aの細胞内局在を反映すること、GFP-TOM2A(TOM2A)およびTOM1-GFP(TOM1)は液胞膜に富む低浮遊密度画分に分画されることを明らかにした。TOM1-GFP(TOM1)は液胞膜画分とともに、より高密度の画分にも見いだされた。さらに、TMVの2本鎖RNA合成活性の分画パターンはTOM1のものと酷似していた。TMVの複製蛋白質は膜の存在しない画分にも多量に存在したが、そこにはRNA合成活性は検出されなかった。(2)TOM1,TOM2A蛋白質の相互作用:酵母two hybrid systemの一種で、膜蛋白質同士の相互作用の有無を検討できるsplit ubiquitin systemを用いてTOM1とTOM2Aが相互作用するか検討した。その結果、TOM2AはTOM1ともTOM2A自身とも相互作用しうることが明らかになった。前述の細胞内局在性の結果とあわせ、TMVの複製複合体はTOM1の存在する膜上で形成されるが、さらにTOM2Aが共存すると複製複合体形成が効率よく起こる可能性が示唆された。
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