Fusarium oxysporum は、各種作物に萎ちょう性病害を引き起こす重要病原菌であるが、その病原性機構についてはこれまでほとんど明らかにされていない。研究代表者らは、形質転換ベクターによる遺伝子タギング法を用いて、メロンつる割病菌(F. oxysporum f. sp. melonis)から43株の病原性変異株を分離した。これら変異株における変異遺伝子を同定し、本菌の病原性機構の具体的な解明を目指した。本年度は、2株の変異株におけるベクター挿入領域の構造と機能を解析し、2つの病原性関連遺伝子(FOW3およびFOW4と命名)を同定した。さらに、形質転換体から胞子形成変異株を選抜し、胞子形成関連遺伝子(REN1と命名)を同定した。 1.FOW3 病原性が著しく低下した変異株X20-17のベクター挿入領域から、FOW3遺伝子を同定した。FOW3がコードするタンパク質は、Cys2His2ドメインを持つ転写制御因子と相同性が認められ、病原性に直接関与する遺伝子(群)の転写制御因子であると推定した。 2.FOW4 病原性を完全に失った変異株X20-36のベクター挿入領域から、FOW4遺伝子を同定した。FOW4がコードするタンパク質は、糖新生に関与するフォスフォエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードすることを明らかにした。 3.REN1 先に分離した形質転換体から胞子形成変異株を選抜し、小型胞子および大型胞子を欠損した変異株(rensa変異株)を分離した。さらに、rensa変異株のベクター挿入領域から、REN1遺伝子を同定した。REN1は、先に単離されているAspergillus nidulans とMagnaporthe griseaの胞子形成関連遺伝子medAおよびACR1と低いながらも有意な相同性が認められた。
|