研究概要 |
本研究の目的は,異種昆虫の絹タンパク質を吐くカイコの分子育種を行うこと,そしてさらに効率のよい分子育種の系を構築することである。最初の2年間、バキュロウイルスAcNPVを、遺伝子を組換えるトランスファー・ベクターとして利用して、我々は、蜘蛛の絹を吐くカイコを創出することを試みてきた。しかし、我々は十分な処理数の蚕を用いて実験したにもかかわらず、この方法によって組換え蚕を作出することができなかった。それで、DNA型トランスポゾンであるpiggyBacの系を用いて、我々はカイコの染色体DNAへの蜘蛛の横糸遺伝子の生殖細胞系転移実験を行った。蜘蛛の横糸は、伸縮性の高い糸で、3倍の長さまで伸びる。蜘蛛は肉食であるので、その大量飼育が困難である蜘蛛は数種類の絹を出糸する。蜘蛛に横糸だけを出糸させるのは困難である。それで、我々は横糸の生産をカイコに行わせることは意味があると考えた。横糸の遺伝子が組込まれた不完全piggyBacを蚕のゲノムDNAに転移させると、転移した横糸遺伝子が発現し、発現した横糸タンパク質が繭中に含まれることを確認したこの転移した横糸遺伝子は、継代しても失われること無く、安定して維持できている。しかし、その組換えカイコによって作られた繭の中の横糸タンパク質の含量は、総繭タンパク質量の僅か1〜2%であった。その蚕が作る蜘蛛糸の比率を高めることが今後の課題である。
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