研究概要 |
γヘモリジン膜孔の分子的実体の解明と膜孔中間体が発見された。 (1)γヘモリジン膜孔の分子的実体の解明: 膜孔の生化学的分析並びに電子顕微鏡による画像解析から、以下の4事実を明らかにした。すなわち,(i)毒素超チヤネルは2成分が交互に配置し、成分比は3:4または4:3であるへテロ7量体構造をとる。(ii)ヘテロ7量体毒素複合体は赤血球膜上でクラスター化し溶血を促進する。(iii)LukFのリム領域に存在するY72残基がヒト赤血球への初発の結合に重要なアミノ酸残基である。 (2)膜孔中間体の発見: LukF, LukS及びHlg2には、システイン残基が存在しない。従って任意の残基のシステイン残基置換体を作出できる。20種類の変異体の内で、LukFのV12(Capドメイン)とT137(ステムドメイン)の両残基をシステイン残基に置換した変異体(Cys12,Cys137)は、Hlg2存在下でヘモリジン活性を持たなかった(実証1)。ところが、グルタチオンを反応系に入れると野性株と同等のヘモリジン活性を回復した(実証2)。実証1及び2は、変異株がCys12とCys137間でS-S結合をとり,プレステムがCapドメインからの切り離しが不可能になり、標的細胞膜に突き刺されないが、還元剤存在下で-S-S-が-SHに戻り、ステムがCapドメインからの切り離しが可能になったことを意味する。また、V45とT137は、最も近接した状態にあることを意味する。さらに、IC5標識LukFを用いて、「一分子測定技術」を駆使して、蛍光顕微鏡下でプレステムがCapドメインから切り離されるタイミングを可視化することに成功した。また、LukFの標的細胞膜フォスファチジールコリンへの結合が、ステムの形成に重要であることを明らかにした。
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