骨粗鬆症は、骨吸収を担う破骨細胞の数及び骨髄における脂肪組織の顕著な増加を伴う病理学的特徴を示す。申請者らは、臨床応用可能な骨吸収抑制剤を得る目的で、破骨細胞の分化及び成熟破骨細胞の機能発現過程に作用する活性物質を微生物代謝産物中から探索してきた。これまでにメバスタチン(コンパクチン)、デストラキシン、レベロマイシンを見出し、その作用機構の解析を行なってきた。本年度は、破骨細胞の初期分化を阻害するメバスタチンの作用機構を検討した。骨髄細胞培養において、メバスタチンは破骨細胞分化誘導因子の作用を阻害することにより、単核破骨細胞の形成を阻害した。ゲラニルゲラニル化阻害剤(GGTI)は、ラミンのゲラニルゲラニル化を阻害する濃度で、骨髄細胞から単核破骨細胞の形成を阻害したが、ファルネシバル化阻害剤(FTI)は単核破骨細胞の形成を阻害しなかった。GGTI処理骨髄細胞は突起を有しない丸い形態を示し、メバスタチン処理細胞とほぼ同じ形態であった。以上の結果からは、破骨細胞の初期分化に低分子G・蛋白質のゲラニルゲラニル化が重要であり、この過程が破骨細胞の分化調節の標的となりうることを示唆しており、骨吸収抑制剤の開発に重要なヒントを提供すると思われる。また、骨粗鬆症の病理学的特徴で骨形成能低下の原因である骨髄中脂肪組織の増加機構を解明し、さらに脂肪組織の増加を改善する低分子化合物を探索するために、骨髄由来のストローマ細胞株からインシュリンによる脂肪細胞への分化実験系を構築した。この脂肪細胞形成系は、ビタミンD3、retinoic acid、TGF βにより阻害され、脂肪細胞の分化を阻害する新規物質の探索に有効であると思われる。
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