申請者らは、臨床応用可能な骨吸収抑制剤を得る目的で、破骨細胞の分化及び機能発現過程に作用する活性物質を天然物から探索してきた。これまでにデストラキシン、レベロマイシンA(RMA)、(-)-Epigallocatechin-3-gallate(EGCG)に骨吸収を抑制する活性があることを見出した。今回これらの化合物についてin vitro及びin vivoにおける作用機構の解析を行なった。デストラキシンは破骨細胞の分化や生存に影響を与えず破骨細胞による骨吸収を抑制した。デストラキシンは可逆的に活性化破骨細胞の形態変化を誘導した。電子顕微鏡の解析から、デストラキシン処理破骨細胞には波状縁や明帯が観察されないことが示された。以上の結果から、デストラキシンによる骨吸収抑制効果は活性化破骨細胞の形態的変化に由来すると考えられる。RMAは成熟破骨細胞に細胞死を誘導することにより骨吸収を抑えた。RMAの細胞死誘導は、ミトコンドリアから細胞質へのチトクロームcの放出、caspaseの活性化及びDNAの断片化が伴っていた。RMAの細胞死誘導はアクチンリングや骨吸収機能を有する破骨細胞に選択的であった。RMAの細胞死誘導効果は、破骨細胞膜周辺の酸性化を阻害するV-ATPase阻害剤、コンカナマイシンBによって阻害された。RMAは甲状腺・副甲状腺摘出ラットにおけるPTHによる血中カルシウムの増加を著しく阻害した。これらの結果から、活性化破骨細胞におけるレベロマイシンAの特異性は破骨細胞がつくる酸性環境によりRMAの細胞内透過性が上昇したことによると考えられる。従って、RMAは、活性化破骨細胞に特異的に作用する新しい骨吸収抑制剤として応用が期待される。EGCGは、フェントン反応の結果生じるヒドロキシラジカルにより、選択的に活性化破骨細胞の細胞死を誘導し、骨吸収を抑制した。お茶の主要成分の一つであるEGCGは過剰な破骨細胞の活性化による骨粗鬆症の発症を予防する目的で応用が期待される。
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