研究概要 |
ラミニンは組織構築に重要な細胞外マトリックスの主成分である。α,βとγの3本のペプチド鎖が会合した十字架状分子で、5種類のα鎖、4種類のβ鎖と3種類のγ鎖が互換的に会合した19種類のラミニンがある。α4β1γ1の鎖組成を持つラミニン-8は、毛細血管外壁を作る内皮細胞や脂肪前駆細胞が分泌する。脂肪形成過程の電子顕微鏡切片像では、成熟中の脂肪細胞が毛細血管の外壁の内皮細胞に張り付いて血液から栄養分を吸収している様子が見える。わずか0.2μmの細胞間隙には薄いマトリックス構造が見え、これが細胞間の接触構造を支えている。本研究では、この本体が血液(プラスミノーゲン)と脂肪細胞(プラスミノーゲン活性化酵素)の接触点で起こるラミニン-8のG領域の切断で誘発される超分子会合によることを実証する。すなわち、分泌直後には5連球であるα4鎖C-末端のLG1-LG5は、毛細血管と脂肪細胞の接点で生じるプラスミンによって3連球と2連球に分けているリンカー部で切断され、正四面体の3陵をなすα4鎖LG1-LG3の3連球が"頭と頭"で会合した6球体構造を取る。これで二量体化したラミニン-8全体は、短腕でのカルシウム依存性のβ1鎖とγ1鎖の会合も手伝って超分子化して細胞間の接触構造を構築する。こ実証のために、CHO/DHFR系で量産したα4鎖LG1-LG5をエラスターゼ処理してLG1-LG3とα4鎖LG4-LG5を取得した。比較のために、α1鎖LG1-LG5からもLG1-LG3とLG4-LG5を取得した。これらを可溶化基底膜(マトリゲル)とbFGFに様々な濃度で混合してマウス皮下に注射して体内でゲルかさせたところ、内在性内皮細胞と間葉系幹細胞の侵入、増殖、分化による脂肪新生が顕著に抑制された。α4鎖の場合は、LG4-LG5、LG1-LG3、LG1-LG5の順で抑制効果を示した。α1鎖の場合には、LG1-LG3もLG1-LG5も効果を示さなかったにもかかわらず、LG4-LG5はα4鎖に匹敵する抑制を示した。
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