研究概要 |
微生物のエネルギー代謝を電気化学エネルギー変換系に直接結びつける新しい系として、バイオ電池を提唱し、実用にむけての科学的基盤を確立することを目的として研究を行った。 (1)従来ほとんど考慮されて来なかったバイオカソード反応を取り上げて、電気化学の立場から厳密な考察を行った。ビリルビンオキシダーゼ(BOD)を用いると、シアノ金属錯体のようなメディエータ存在下、酸素の水への4電子還元を生理条件下電気化学的に実現できることを世界ではじめて見出した。さらに、特定の炭素材料を電極に用いた場合に、メディエータ無しで顕著な酸素還元電流が流れることを発見し、BOD固定法の工夫によって、予期しない大きな電流密度が実現できることを見出した。 (2)水素をバイオアノード反応の燃料とする研究において、硫酸還元菌が強力な水素酸化触媒能を示すことを見出し、上記BOD触媒カソード反応と組み合わせて、プロトタイプの水素-酸素バイオ電池を世界ではじめて作成した。 (3)グルコースのアノード反応の触媒にPQQを補酵素とするグルコース脱水素酵素を採用し、比較的大きな電流密度のバイオ電池作成に成功した。また、2アミノ,3カルボキシ-pナフトキノンをメディエータとするジアホラーゼ触媒電極反応でNADHの拡散律速電解酸化が起こることを示した。 (4)エタノール燃料バイオアノードの研究の展開として、アルコールを犠牲試薬とする水素の電解製造の可能性について考察を進めた。硫酸還元菌触媒での水素の電解生成と酢酸菌触媒エタノール電解を組み合わせ、非常に少ない電力で純粋な水素の電解製造が可能になることがわかった。 (5)藍藻の光化学反応を電極系に共役させ、光合成反応と呼吸反応を組み合わせた電池ができることを実証した。しかし、この系は大変不安定であり、また変換効率の低さも問題である。
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