1.小麦粉中のアレルゲンを網羅的に酵素分解することにより調製した低アレルゲン化小麦粉ならびに難消化性オリゴ糖ラフィノースのアレルギー改善機構を明らかにすることを目的として、以下の検討を行った。 2.Brown Norway(BN)ラットを用いてグルテン特異的アレルギー性気道好酸球性炎症モデルを確立し、低アレルゲン化小麦粉の気道炎症予防効果を明らかにした。また低アレルゲン化小麦粉によりグルテン特異的な全身性の免疫応答が抑制されたので、低アレルゲン化小麦粉は経口免疫寛容を誘導することによりアレルギーを予防することが示唆された。そこでBALB/cマウスを用いて免疫細胞養子移入実験を行ったところ、低アレルゲン化小麦粉を摂取したマウスをドナーとした場合にレシピエントのグルテン特異的血清抗体価が低く抑えられた。したがって低アレルゲン化小麦粉による経口免疫寛容誘導には抑制性T細胞が出現するアクティブサプレッションが関与することが示唆された。また、低アレルゲン化小麦粉は卵白アルブミン(OVA)の腸管透過を抑制するペプチドを含むことが明らかとなり、BNラットにおけるOVAの経口感作を低アレルゲン化小麦粉が抑制することが示された。 3.OVAを抗原としたBNラットの気道好酸球性炎症モデルにおいて、食餌ラフィノースは気道炎症を改善し、この効果は盲腸を切除してネオマイシンを毎日経口投与した動物においても発現した。また経口投与したラフィノースの一部は体内に吸収されることが示され、更にラフィノースを腹腔投与した場合にもOVA特異的気道好酸球性炎症が抑制されたので、食餌ラフィノースによるアレルギー予防効果の少なくとも一部は体内に吸収された後に発揮されるものであることが示唆された。また各種オリゴ糖との比較実験の結果、ラフィノースに存在するα-ガラクトシル結合が効果発現に関与することが示唆された。
|