研究概要 |
食糧種子タンパク質モジュレーターとしてダイズのアスパラギン酸プロテアーゼ(AP)を中心に解析を行い、異なる5種(soyAPα〜soyAPε)のクローンを得た。これらについて発現部位と発現時期(発芽、登熟、葉、根、茎、子葉)をノーザン分析によって検討したところ、soyAPαは、発芽後の種子、葉、根、茎など、植物体のほとんどの部位に発現した。soyAPβは、soyAPαと塩基配列の相同性が極めて高く、soyAPαとほぼ同様の発現パターンを示した。これに対してsoyAPγ,soyAPεは、いずれの部位、ステージにおいても発現が、ほとんど検出されなかった。soyAPδは、発芽過程においてsoyAPαとは対照的に休眠種子及び発芽の初期段階で発現した。次に発現部位をしらべるためにin situハイブリダイゼーションをおこなった。その結果、soyAPαは、種子のうち子葉細胞、表皮細胞、維管束に分化する細胞などの広い範囲で発現したのに対し、soyAPδは、維管束に分化する細胞と胚軸付近に特に強い発現が見られた。このようにsoyAPαとsoyAPδはターゲット分子が異なることが予想され、今後活性測定ならびに立体構造の差異を検討する予定である。 プロテアーゼインヒビターとして小麦のシスタチンについても解析を行った。小麦種子にはWC1, 2, 3, 4の4種のシスタチンが存在し、互いに45〜70%のアミノ酸の相同性を示した。これらのうち、WC1, 2および4は登熟期に発現するものの、その後徐々に減少した。一方、発芽期にはWC1は他の分子種にくらべ明らかに発現が高かった。また、抗体染色から、WC1は種子全面に発現しているのに対し、WC4はアリューロン層と胚のみであった。シスタチンについても生理機能の異なるWC1と4についてタンパク質レベルの解析を行っている。
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