免疫化学的手法によるバイオマーカーの特異的微量定量法を確立、特に、モノクローナル抗体を用いたELISA(Enzyme-linked Immunosorbent Assay)法による抗酸化活性評価系を確立して、in vitroからin vivoにおける疾病、特に、動脈硬化や糖尿病の合併症などに対する抗酸化食品の持つ作用メカニズムとその抑制への系統的な応用を目的として本研究を行った。本年度は、特に、脂質過酸化初期反応生成物として13-リノール酸ヒドロペルオキシド(13-HPODE)を用いて核酸塩基との反応生成物の化学的な分析をおこなった。その結果、L2dGと命名した2'-deoxyguanosineに13-HPODEが付加した新しい酸化傷害バイオマーカーを得ることに成功した。そこで、L2dGの生成機構の化学的な解析を行うと共に、L2dGを抗原としたモノクローナル抗体の作製にも成功した。このモノクローナル抗体を用いて、コリン欠乏食投与による肝臓ガンモデル動物のごく初期の時期にも免疫染色することに成功した。既に作製に成功し、広く用いられている酸化傷害DNAである8-hydroxy-2'-deoxyguanosineとの併用により、新しい酸化傷害バイオマーカーとしての有用性と共に、ガン化のメカニズム解析に新たなアプローチが期待できる。現在、免疫担当細胞でとして知られる好中球やマクロファージ由来のニトロ化物や塩化物、臭化物の化学的な解析も着実な進展がみられ、2'-deoxyguanosineのジブロム体を得ることにも成功し、現在、有機化学的な解析と共に、モノクローナル抗体の作製を進めつつある。
|