白内障は水晶体の一部または全体が白色または黄褐色に混濁する疾患である。白内障の発症要因の一つとして酸化ストレスも重要であることが報告され、非常に注目を集めている。そこで、抗酸化食品因子であるクルクミノイドに着目し、クルクミン(U1)およびその生体内代謝産物テトラヒドロクルクミン(THU1)による抗白内障作用について検討を行った。まずガラクトース経口投与による白内障発症に対するクルクミノイドの効果を検討したところ、コントロール群と比較して、ガラクトース食群でのレンズ濁度が顕著な上昇したのに対し、ガラクトース食群+0.2%クルクミン(U1)群、ガラクトース食群+0.2%THU1群のレンズ濁度上昇が有意に抑制され、U1とTHU1を比較すると、THU1の方がより強いレンズ濁度の上昇抑制効果が認められた。白内障のin vitroのモデル系でも同様に、THU1添加によりレンズの混濁が抑制された。また白内障モデルでのグルタチオン量減少がTHU1添加により改善され、レンズ中の脂質過酸化物量が、白内障モデルで通常の約3倍に増加したのに対し、THU1添加により、その量はコントロールとほぼ同程度であった。レンズでの抗酸化酵素活性は、白内障モデルにおいてglutathione peroxidaseとsuperoxide disumutase活性の有意な低下が、またTHU1の添加により、これらの活性の回復がみられた。以上の結果からTHU1はレンズにおいて抗酸化物質として作用した結果、レンズの酸化傷害を抑制し混濁を低下させたと考えられた。また、THU1は糖尿病モデル動物の血清での過酸化脂質量の減少に作用することも明らかにしている。現在、これらの糖尿病合併症モデルにおいて、免疫学的手法による酸化ストレスの検出を進めており、病態の進行との関連を検討しつつある。
|