研究概要 |
本研究「環太平洋における過去200年間の流域地表環境と土砂流出フラックス変化」は、平成13年度から開始され、4年間で画期的な成果を上げることができた。研究成果として、論文約30編、著書4編のほか国内外での10本以上の研究発表が行われた。また、研究フィールドが環太平洋地域であることから、本研究を通じてアメリカ、ニュージーランド、オーストラリア、タイとの共同研究体制も確立された。 本研究は、流域の地表環境を(1)地形構造、(2)生態系の組み合わせとして把握し、これらと生産土砂量、滞留土砂量、流出土砂量との関係を明らかにし、これに基づいて土砂流出フラックス(単位時間、単位面積あたりの流出土砂量)を予測しようとするものである。研究対象地は、九州一ツ瀬川支流大藪川、中部天竜川支流与田切川および手良沢川、北海道沙流川である。さらに、本年度は比較対象地としてニュージーランドワイアプ川支流ウェラアマイア川を踏査し、データを解析した。 その結果、(1)森林伐採などの流域環境変化に最も敏感に反応し、下流まで影響を及ぼす細粒土砂について解明した(Kim and Marutani, 2002)(Kim and Marutani, 2003)(金・丸谷・宮崎、2003)。また、(2)GISを用いた流域スケールでの地形(流域面積・形状、水系)解析から、生態系を森林、耕地などのパッチモザイクの集合体として把握し、分布、形態、規模の時間的変化を明らかにした(戎・古川・丸谷、2003)(伊藤・藤井、投稿準備中)。さらに、(3)リモートセンシングで評価された地表環境と地表侵食の連鎖や相互作用を解明した(Kikuchi, 2003)(国広・菊池・野田、2003)(光田・伊藤、2003)。最後に、(4)九州椎葉地域一ツ瀬川源流域において、本研究で得られた成果に基づいて解析モデルを用いて地表環境と土砂流出の関係について応用研究を行った(戎・丸谷、未投稿)(Kasai, Marutani and Brierley, 2004)。
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