研究概要 |
1.マツ木部のキャビテーションに対する感受性の解明 クロマツのキャビテーション感受性に関する追加実験とアカマツのキャビテーション感受性の評価をおこなったところ,アカマツでも地上部の幹は地下部の根に比べて感受性の高いことがわかった。さらに,仮道管有縁壁孔の形態を走査型電子顕微鏡で観察したことろ,根のマルゴ網目の小孔の大きさが幹のそれに比べて大きいことがわかった。エアーシーディング理論によると,マルゴ網目の小孔が大きい程キャビテーション感受性が高くなる。本研究で観察したマルゴ網目の小孔の大きさの違いが,根と幹のキャビテーション感受性の違いの原因であると考えられる。次に,マツノザイセンチュウを接種したクロマツにおこるエンボリズムを調べたところ,生き残ったマツでも木部にはエンボリズムが生じていることがわかった。この研究成果は第8回国際植物病理学会議(ニュージーランド)で発表した。 2.ハイマツの木部のキャビテーションに対する感受性の解明 乗鞍岳の標高2750m付近に分布するハイマツ林で,春に針葉が褐変化したシュートと健全なシュートの蒸散速度(スーパーポロメーター使用)と水ポテンシャルの季節変化(7月から9月)を測定することで,それぞれのハイマツの水分生理状態を評価した。成長期間初期,褐変化したシュートは健全なシュートに比べて水不足がきびしいことがわかった。富士山の樹木限界付近に分布するヒメコマツでも葉の褐変化が見られたので,ハイマツの褐変化と対比するためにヒメコマツのキャビテーション感受性を評価したところ,ハイマツ同様に顕著なエンボリズムは認められなかった。これらのことから,ハイマツとヒメコマツにおこる針葉の褐変化は針葉の脱水が主要な原因である可能性が示唆されたが,来年度もさらに測定を重ねる多くのデータを得る必要がある。 III.海外共同研究者であるユタ大学・ジョン・シュペリー教授を訪れ,平成13年度から14年度夏にかけて得られたデータの解析と実験機器改良のための情報を収集した。
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