研究概要 |
オゾン分解法によるリグニン化学構造分析では、リグニン中の主要構造であるarylglycerol-β-aryl ether結合(以下β-O-4結合)に由来するエリスロン酸、スレオン酸の定量をすることによって、同構造のリグニン中の量および立体異性対比についての情報を得ている。今年度はエリスロン酸、スレオン酸に加えて、側鎖α位の縮合型構造に由来するオゾン分解性生物である3, 4-ジヒドロキシ酪酸をオゾン分解物中に同定した。ついで、この酸の生成量の変化に基づいて、リグニンをアルカリ処理した場合の縮合型構造の生成挙動を、アルカリ処理条件との関連で明らかにすることに成功した。アルカリ系の蒸解過程でのリグニン縮合反応の進行について間接的なデータは従来得られていたが、本実験の結果はそれについての、初めての直接的なデータである。 他方、β-O-4結合について、その立体異性対比が材の内部応力の変化と明瞭な相関を持って変化することを明らかにした。この結果は、異なった力学的環境で組織形成が行われると、リグニンの立体構造がそれに対応して変化することを示唆するものである。
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